「こんか漬け」の伝統を守りたい。『金沢こんかこんか』に集う若者のパワーと地元愛(前編)
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「こんか漬け」の伝統を守りたい。『金沢こんかこんか』に集う若者のパワーと地元愛(前編)

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金沢の伝統食「こんか漬け」を製造する『金沢こんかこんか』。

ひがし茶屋街から徒歩10分ほど、金沢市材木町の町家を改装した加工場で、昔ながらの製法を守りながら、変わらぬ味をつくり続けています。

一時は廃業の危機もあったといいますが、「歴史あるこの食品を途絶えさせてはならない」という若者たちの熱意によって2017年に第二章がスタート。現在に至ります。

今回は、創業者の娘・斉藤園さんと、現在事業を引き継ぎ糠乃舎を運営する『ミラークリエイティブオフィス』の越野あゆみさんにお話を伺いました。

 

まずは商品紹介。先入観が覆されるまろやかな味

金沢市のこんか漬け専門店「金沢こんかこんか」のサバのこんか漬け■本来こんか漬けにはさまざまな魚が使われますが、同店ではサバ一本に絞って美味しさを追求しています。

 

――「こんか漬け」は、サバ、フグ、イワシなどの魚を塩漬けしたのち半年以上ぬか漬けにした保存食です。この地方では広く作られている食品になりますが、『金沢こんかこんか』ならではの特長はあるのでしょうか。

越野:そうですね、うちのこんか漬けは「ぬかをそのまま食べられるほどまろやか」というのが一番の特徴かなと思います。

――塩辛すぎないということでしょうか?

越野:そうなんです。「好きだけど、塩分が気になってなかなか食べられないんだよね」とおっしゃっていた方に試食していただいて、「これなら大丈夫」とご購入いただいたこともあったぐらいなんですよ。

 

金沢市のこんか漬け専門店「金沢こんかこんか」のサバのこんか漬け ■塩漬けと糠漬けによって水分が抜け、うま味が凝縮したこんか漬け。

 

越野:実は私、昔初めてこんか漬けを食べたとき「しょっぱい」と感じて、それ以来ずっとネガティブなイメージがあったんです。
けど『金沢こんかこんか』を食べた瞬間、その観念が覆されたんですよね。「美味しい!もっと食べたい!」って。

――私もこんか漬けには「美味しいけど少ししょっぱい」という印象がありました。塩味が強すぎなければもっと気軽に食べられそうですね。

越野:はい、もう毎日食べても飽きないです!お子さんでも大丈夫。うちの息子も3歳のころから食べているんですよ。

 

「金沢こんかこんか」のこんか漬けで作ったおにぎり ■やっぱりご飯との相性は抜群です。おにぎりはイベントでもよく販売していて、リピーターも多いのだとか。

 

――先ほど「ぬかをそのまま食べられるくらいまろやか」とおっしゃっていた言葉通り、『金沢こんかこんか』では「食べられるぬか」も販売されていますね。

越野:ぬか床のぬかにサバの身を混ぜた商品で、「おかずなぬか」といいます。

 

■ごはんにはもちろん、お湯で溶いてスープとしてもいただけます。

 

越野:ぬか漬けのぬかを食べるなんて、なかなかびっくりしますよね。

――そうですね!どのような味なのか気になります。

越野:見た目は柔らかい味噌って感じですかね。舐めるとお醤油のかおりがふわっと優しくて。何に似てるかな、なかなか例えがたい味なんですよね。

――食べてみてのお楽しみですね。

 

この感動をみんなに広めたい。試行錯誤の末に完成した味

「金沢こんかこんか」創業者親子の写真■親子二人三脚で事業を軌道に乗せてきました。

 

――続いて、創業当時のことを教えて下さい。斉藤さんのお母様・池田由美子さんが、知り合いのおばあちゃんが作ったこんか漬けの味に感動したことがきっかけで始めたとお聞きしていますが……。

斉藤:最初は、母の楽しみとして始まりました。商売にしようとは思っていなかったんですね。
家庭用の小さな樽で漬けて、まわりの人に配っていたらだんだん評判になって、それじゃあもっと多く作ろう、ということになったんです。

 

「金沢こんかこんか」のこんか漬けの製造工程■おばあちゃんに分けてもらった秘伝のぬか床を大切に使い続けています。

 

――その後『池田商店』を立ち上げ、こんか漬け製造を事業化。やはり、苦労された点もあったのでしょうか。

斉藤:そうですね。家庭用の樽と業務用の樽ではサイズが違いますから、それに合わせて分量など色々変えなくてはいけないことがあって。そのせいでだいぶダメにしてしまったり……。
サバを仕入れる資金の面も含めて、なかなか難しかったですね。

――なるほど。

斉藤:それまで商売ってしたことがなかったものですから。いろいろな方にご協力いただきながら、徐々に取り扱っていただける店を増やしていきました。

 

「金沢こんかこんか」のこんか漬けの製造工程■樽の上の方に漬けられたサバは味が薄く、下の方は濃くなってしまうのだそう。そのため、味が決まるまで樽の上下を入れ替える「漬け替え」という作業を繰り返します。

 

――多くのファンに支持され続けた『金沢こんかこんか』ですが、池田さんがご高齢になったことから一時は継続が難しくなってしまいました。
さまざまな経緯を経て、現在は越野さんも勤めるデザイン会社『ミラークリエイティブオフィス』に事業承継され、運営が続いています。

越野さんはもともとデザイナーとして入社されたそうですが、現在はこんか漬けの現場作業にも携わられていますよね。これはどういった経緯で?

越野:私、もともと『金沢こんかこんか』のいちファンだったんですよ。入社して初めて食べたとき本当に感動して。その後ずっと定期購入していたんです。

それが数年続いたある日、製造のお手伝いをしてくださっていた方々が辞めることになりまして。現場の担当が斉藤さんお一人になってしまったんです。

――それは大変ですね。

越野:そうなんです。私、すごく心配で。もし斉藤さんに何かあったらこんか漬けの味が途絶えてしまう!私の大好きな「推し食品」がなくなってしまう!って。
それで、「新しい人が決まらないなら私がやります」と手を挙げました。今は週3日デザイナーで、週2日がこんか漬けです。

――それはなんともお忙しい……!

越野:いやいや、この仕事は私にとって推し活なんです。生き生きと働いております。

――推し活!斉藤さんからご覧になって、越野さんはいかがですか?

斉藤:とにかく、こんか愛が素晴らしい!

――まさしく、推しへの愛ですね。

 

「金沢こんかこんか」のこんか漬けの製造工程 ■使われるサバはほとんどが石川県で水揚げ。「不思議と県内のサバで作るのが一番美味しいんです」と越野さん。

 

「金沢こんかこんか」のこんか漬けの製造工程 ■作業場は夏暑く、冬は寒い。過酷な環境下でも、一つひとつ丁寧に工程を進めていきます。

後編につづきます】



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じのもんライター:中嶋 美夏子

大学進学を機に金沢へ。おいしい食べ物と暮らしに根付く美意識に感動し、日々探求しているうちにいつの間にか十数年が経ってしまった。人々のなにげない日常が撮りたくて、ちょっとしたお出かけでもいつもカメラと一緒。能登からやってきた保護猫とふたり暮らし。