農家と薬味『小作』の多彩な「薬味」は人里離れた山の中にひっそりと存在する「杉水(すぎのみず)」という集落で作られています。
風光明媚な温泉街として、古くから多くの人が訪れる山中温泉から車で約30分。
かつては炭焼きで栄えた杉水町の現在の住民は10人にも満たず、深い森や山林に囲まれた集落は、空き家や耕作放棄地が目立ちます。
それだけ聞けば、限界集落の寂れた村の様子が思い浮かぶかもしれません。
けれど、集落は実にイキイキとしています。
決して多くの人でにぎわっているわけではないものの、人が醸し出す生きる気配がそこかしこで感じられます。
■刈り取った稲を天日干しする伝統的な乾燥方法「はさがけ」が残るのどかな風景。
「連綿と続けられてきたこの風景をなくしたくない」。
農家と薬味『小作』の代表・霜下靖允さんがこの地に店を置いたきっかけです。
杉水には祖父の家があり、霜下さんは幼い頃から両親に連れられてよく遊びに訪れていたといいます。
「虫取りや山遊びも楽しみましたが、森や川の音を聞きながらぼんやりするのが好きな子どもでした」。
■杉水集落にある上下2段の「神人の滝」。この美しい渓谷は、鎌倉時代に西行法師とともにこの地を訪れた弟子の西住法師が住み着き修行したと伝えられています。
他の場所では得られなかった原体験をくれた土地をただ「保存」するのではなく、この地の「営み」を未来につないでいきたい。
霜下さんの言葉にそんな静かな決意を感じました。
杉水は山と人と獣が共存する境界の地

森を開いて田畑を耕し、山に分け入って山菜や野草、木の実などを採取する。
杉水では長い間、そうやって山と自然と人が共存してきました。
だから、『小作』は可能な限り地元産の材料にこだわります。
「山と共存しているのは、人間だけじゃない。山は人間だけのものではない」。
これは、山の恵みをいただく者としての霜下さんの信念。
山間の集落では人と野生の獣の距離が近く、山中に分け入ればばったりと出会ってしまうこともあります。
田んぼや畑の作物を荒らされることもあります。
霜下さん曰く、それは「当然のこと」。
どちらかがどちらかの領域を犯したのではなく、どちらもこの地でずっと生きているのだから、ばったり出会いもするし、山の幸だってどちらか一方のものではない。
山と共存することは、山で暮らす生き物と共存することなのだと霜下さん。
どちらのものでもある。
この考えは、収穫や生産という人間の側から見た効率は悪くなっても、自然とこの地の歴史に敬意を表するため現代人が守るべき節度だとも。
そうして作られる「薬味」には、杉水がいっぱいに詰まっているのだと、霜下さんの表情がほころびます。
手間暇は私たちがかけておきます
■収穫・採取から加工、パッケージング、販売まですべてを自分たちで行うのは「可能な限り、直接に近いかたちで使う人の手に届けたい」という想いから。
『小作』の薬味は実に多彩です。
一味や柚子胡椒などの乾燥スパイス系をはじめ、杉水で採れた米で起こした米麹の調味料、季節の山菜や野草を使ったものまで種種様様。
ところで「薬味」とは、一般的に日本料理に使われる香辛料を指します。
香辛料のうち「葉、花、茎」を使うものをハーブ、「葉、花、茎以外の香辛料」を使うものをスパイスとして分類されますが、「薬味」はどちらも内包し、野菜や山菜なども薬味とされます。
古来、保存食として使われたり、料理に風味や香りをプラスしたり、重宝されてきましたが、作るには手間も時間もかかります。
「その手間と時間は私たちがかけておきます。みなさんは、ただ楽しくおいしく味わってください」と霜下さんは言います。
そこには国の重要伝統的建造物群保存地区として認められたこの地域が活気を取り戻し、この自然と風景がこれからも永く続くことへの思いがあります。
■杉水にある農家と薬味『小作』の店舗。
祖父の家に足しげく訪れた子どもの頃のように、ぼんやりと自然の中に身を置くことで、何もないと思っていた山間の集落が、いかに豊かでにぎやかでかけがえのないものであるかが見えてくる。
そんな場所は、今の日本にはもういくらもないかもしれないからこそ、この地をただ保存するのではなく、この地で生業を持つのだと。
「杉水が、人はもちろん野生の生き物や植物にとっても、安全で安心できる場所であり続けることが私の目標です」。
霜下さんは、心底愛おしそうにそう言って話を締めくくりました。
■『小作』では、SNSなどを通じて薬味を使ったレシピも公開しています。
■今回ご紹介した商品は、「加賀の山里・手作り薬味プレミアムギフトバコ」でお選びいただけます。
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