移住者として地域に新たな視点をもたらした、ひのともりのオーナーシェフ日野 貴明さん。
困難な状況を経ても、能登に根を張る決意は揺るぎません。
人が集い、明かりが灯る町を引き上げる若い力
里山から街を通り、海へ注ぐ御祓川(みそぎがわ)の河口付近。
観光地から少し奥まったエリアにある『ひのともり』には、地元の若者が集います。
能登食材がたっぷり使われたランチや、フレンチの技を活かしたスイーツが楽しめるカフェタイム。
のんびり時間を過ごしたくなるような和やかなお店です。
■角地に建てられた一軒家の店はつい中を覗きたくなる。白く塗られた壁に映えた赤いロゴマークが目印。
オーナーは金沢生まれ東京育ちの日野貴明さん。20歳の頃に珠洲を訪れてから能登の景色や人の温かさに触れ、転がるように移住・起業を決めたといいます。
2021年にフレンチレストランを開業し、よりカジュアルな業態へ転身を考えていた――震災が起こったのはそんなときでした。
直後の店内は痛ましい光景でしたが「落ち込んだのは一瞬」と日野さん。持前のアグレッシブさで珠洲へ炊き出しに通いながら、復旧作業や準備を進め、春には食堂スタイルにリニューアルしてお客様を迎え入れました。
■約10種類の小鉢がついた「季節の贅沢定食」(2000円)。どの料理も丁寧に仕込まれ、少ないポーションでも満足度が高い。家庭料理でありながらフレンチのエッセンスが効いたものも。
日々の賑わいはもちろん、店内には委託販売商品が並び、定休日には間借り店舗が入る。
『ひのともり』には、いつもたくさんの人のエネルギーが満ちています。
「“皆でつくる”がコンセプト。いつもこの場所に明かりが点き、集まる場があることは
町の活力にもつながります。皆の“能登の好きな場所”になれるように続けていきたいんです」。
■明るい光が差し込む窓辺には、いつかの賑わいの痕跡ともとれるワインの空瓶が並ぶ。カウンターも用意され、一人客がスタッフと和やかに会話する様子もこの店の日常。
■委託で焼き菓子も販売
ワークショップやマルシェ、子ども食堂など展望は尽きませんが、その一歩が今後予定している金沢への
出店です。
知名度を広げ、能登に足を運んでもらうための大きな決断。「全てはこの場所と能登を守るため」と話す表情の裏に、日野さんの若さだけではない熱量が見え隠れしていました。
ひのともり
0767-58-6214
石川県七尾市小島町大開地1-5
営/【ランチ】11:00~14:00、【カフェ】14:00~16:30
休/月・火曜
[Instagram]@hinotomori770
ライター:西川 李央
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