夏、能登半島の各地で明かりが灯る。
日本遺産に認定もされている「能登のキリコ祭り」は、ひとつのまちだけでは終わらない。
7月から9月まで能登半島の各地で行われるため、「能登のキリコ祭り」のうち、8月最終日曜に行われる「冨木八朔祭礼」に行ってきました。
「冨木八朔祭礼」の始まりは古く、なんと約千年前!
増穂浦に漂着した男神が、海辺の住吉神社の女神に助けられて夫婦になるも、荒波の音に耐えかねた男神が、山手の八幡神社へ宮居を移してしまい、二柱は離れ離れに……
年に1度、女神と逢うために男神を神輿に乗せて渡御したのがこの祭礼の始まりだそうで、ロマンティックなストーリーですね。
2日間行われる中で、1日目の「お旅祭り」では、夜に八幡神社の男神が住吉神社の女神のもとへ渡御されます。
タイミングが合わず、こちらは見学できなかったのですが、2日目「本祭り」は、昼過ぎから行われるので、見学できました。
■各地区民が鐘や太鼓を打ち鳴らして神輿やキリコを先導していきます
カンカンと打ち鳴らされる鉦(かね)、独特なリズムの太鼓。潮風になびく白い大幟。
その後に続いて、金色に輝く神輿が進み、でいきます。
聞けば、各集落の神輿が住吉神社に参集後、増穂浦で列を組んで浜辺を歩く「浜廻り」をしつつ、各地域を巡行して男神を八幡神社まで送り届けるのだとか。
■晴天に恵まれた2日目。鉦や太鼓の後に続いて神輿がおでまし
実際に訪れて感じたのは、このお祭りを含む「能登のキリコ祭り」は地域密着型なのだということ。
キリコやお神輿を担いでいる住民はもちろん、その地域の住民たちみんなで祭礼を楽しんでいます。
もしこれが1日目の晩なら、道沿いの家では窓を開け、親類や友人たちを招待してごちそうをふるまい交流する「ヨバレ」を見かけられたのかしらと思いを馳せてみたり。
■浜廻りで、神輿が目の前を通過。賑やかで神々しかったです
実際に見た今ならわかる。ゆるやかな時間の中、真摯に、祈りを込めて、祭礼を楽しむ。
一見素朴なのだけど、神事と地域への「こころ」が込められたお祭りは、じんわりと胸を打つFurusato感のある風景でした。
能登の祭礼は〈日常の中のハレの日〉。
地域の人が地域の豊かさや平安を神様に祈り、神様と会う、純粋で熱い神事なのですね。
冨木八朔祭礼(とぎはっさくさいれい)
場所/石川県志賀町富来地区・東増穂地区・稗造地区
開催日/8月最終日曜とその前日
じのもんライター:西木 來白 東京からUターンし、現在は小松在住。編集・ライター歴が20年を超えたあたりで数えるのを止めた。仕事が楽しいが多忙続きで、電車に乗ると10分もしないうちに寝落ちるのが悩み。そんな我が身を見直し、オフでは癒しを求めている。趣味は旅行と地酒探し。 |